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生前にできる相続税対策10選

先にここだけ見る
生前対策は「10個全部覚える」より、まず3本柱で考えると分かりやすいです。
多くのケースでは、最初に見るべきは 贈与生命保険不動産/土地 です。ここで大枠を決めてから、養子縁組・信託・寄付などを足していく方が迷いにくくなります。
暦年贈与は早く始めるほど有利 生命保険は非課税枠+納税資金 不動産は効くが判断は重い
最初に見やすい
暦年贈与
生命保険
効果大
不動産活用
小規模宅地
最新ルール
暦年贈与7年化
精算課税110万円
🎁
贈与は「早く始める」が勝ちやすい
現金や有価証券が多いなら最初に見やすい対策。最新ルールでは暦年贈与の持ち戻しが7年へ段階拡大しているため、昔より早期着手の価値が上がっています。
🛡️
生命保険は節税と納税資金を両立しやすい
死亡保険金の非課税枠を使えるうえ、相続発生後の現金確保にもつながります。不動産比率が高い家ほど実務上の効果が分かりやすい対策です。
🏠
不動産は効くが、判断を誤ると重い
評価圧縮や小規模宅地の活用で強い効果が出る一方、収益性や売却しやすさ、税務否認リスクまで含めて考える必要があります。
図で見る:始めやすさと効きやすさ
暦年贈与
始めやすい
生命保険
資金確保にも効く
不動産活用
効果大だが重い
表で見る:優先度の考え方
対策群優先度向いているケース
贈与現金・有価証券が多い
生命保険納税資金も同時に確保したい
不動産土地評価が高い・貸付も視野
遺言・信託分割や承継を揉めずに進めたい
順番で見る:生前対策の進め方
STEP 1
いまの相続税を把握する
まず現在地を把握。課税されるか、どこが重いかを見ます。
STEP 2
資産の種類ごとに分ける
現金・保険・不動産・事業資産で使える対策が変わります。
STEP 3
最新ルール込みで選ぶ
贈与の7年化や精算課税110万円控除を踏まえて、早めに方針を決めます。

はじめに:なぜ生前対策が重要なのか

相続税は、被相続人が亡くなった時点の財産に対して課税されます。つまり、相続が発生する前に財産を減らしておけば、相続税を合法的に軽減できるのです。

2015年の税制改正で基礎控除が引き下げられ、相続税の課税対象者は大幅に増加しました。「うちは資産家でもないから大丈夫」と思っていた方が、実際に計算してみると課税対象だった、というケースは珍しくありません。特に、自宅の土地の評価額が高い都市部では、基礎控除を超えるケースが多くなっています。

相続税対策は、早く始めるほど効果が大きくなるものが多いです。特に贈与による対策は、長い期間をかけることで累計の非課税額が大きくなります。本記事では、実践的な10の対策を解説します。

対策1: 暦年贈与(年110万円の非課税枠)

最も基本的で広く使われている対策が暦年贈与です。1年間(1月1日〜12月31日)に受け取る贈与額が110万円以下であれば、贈与税は非課税です。

例えば、子2人と孫3人に毎年110万円ずつ贈与した場合、年間550万円、10年間で5,500万円を非課税で移転できます。

暦年贈与のポイント

  • 贈与契約書を作成する: 「毎年110万円を10年間贈与する」という約束は「定期贈与」とみなされ、全額が課税対象になるリスクがあります。毎年個別に贈与契約書を作成しましょう。
  • 銀行振込で記録を残す: 手渡しの現金贈与は証拠が残りにくく、税務調査で否認されるリスクがあります。
  • 受贈者が管理する口座に入金する: 名義だけ子供・孫にした口座(名義預金)は、実質的に被相続人の財産とみなされる可能性があります。
  • 相続開始前7年以内の贈与に注意: 2024年以降の相続から、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるルールに変更されました(従来は3年以内)。早く始めるほど有利です。

対策2: 教育資金の一括贈与

30歳未満の子・孫に対して、教育資金として最大1,500万円まで一括で非課税贈与できる制度です(2026年3月31日まで)。

  • 金融機関に専用口座を開設し、教育費に使う都度引き出す仕組み
  • 学校の授業料、入学金、教材費などが対象
  • 学習塾や習い事は500万円まで
  • 受贈者が30歳になった時点で残額がある場合、その残額に贈与税が課される

孫が幼い場合は特に効果が大きく、1人あたり1,500万円を相続財産から移転できます。ただし、手続きが煩雑で管理コストがかかる点には留意が必要です。

対策3: 住宅取得等資金の贈与

子・孫が住宅を購入する際に、最大1,000万円(省エネ等住宅の場合)まで非課税で贈与できる制度です。

  • 受贈者が18歳以上であること
  • 受贈者の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 省エネ等住宅: 1,000万円まで非課税
  • それ以外の住宅: 500万円まで非課税
  • 暦年贈与の110万円とは別枠で適用可能

子・孫が住宅購入を予定している場合は、タイミングを合わせて活用するとよいでしょう。

対策4: 生命保険の活用

相続人が受け取る死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。現金で保有しているより、生命保険に切り替えた方が相続税上有利になります。

生命保険活用のメリット

  • 非課税枠が使える: 法定相続人3人なら1,500万円まで非課税
  • 受取人を指定できる: 遺産分割協議を経ずに確実に特定の人に渡せる
  • 納税資金を確保できる: 不動産が多い場合、保険金で相続税の納付資金を準備できる
  • すぐに受け取れる: 銀行口座が凍結されても、保険金は比較的早く受け取れる

高齢でも加入できる一時払い終身保険は、相続税対策として特に人気があります。例えば、80歳で1,500万円の一時払い終身保険に加入すれば、法定相続人3人の場合、その1,500万円分は非課税になります。

対策5: 不動産の活用

不動産は相続税の評価額が時価より低くなる傾向があり、現金を不動産に換えるだけで課税評価額を下げられる場合があります。

  • 土地の評価: 路線価方式による評価額は、一般的に時価の80%程度
  • 建物の評価: 固定資産税評価額は、一般的に建築費の50〜70%程度
  • 賃貸物件: 貸家は評価額がさらに30%減、貸家建付地は15〜20%程度減
  • 小規模宅地等の特例: 居住用は80%減額、賃貸用は50%減額

例えば、1億円の現金で賃貸アパートを建てた場合: 土地の路線価が8,000万円、建物の固定資産税評価額が4,000万円とすると、賃貸用の減額を加味した評価額は大幅に下がります。

ただし、「相続税対策のためだけの不動産購入」は税務調査で否認されるリスクがあります。2022年の最高裁判決では、相続直前にタワーマンションを購入した事例で、路線価方式による評価が否認されました。不動産活用は、収益性や生活の必要性も含めて総合的に判断すべきです。

対策6: 養子縁組

養子縁組により法定相続人の数を増やすと、以下の効果があります。

  • 基礎控除が増える: 1人増えるごとに600万円増加
  • 生命保険・退職金の非課税枠が増える: 1人増えるごとにそれぞれ500万円増加
  • 各人の法定相続分が小さくなり税率が下がる: 累進税率の効果で合計税額が減少

ただし、相続税法では養子の数に制限があります。

  • 実子がいる場合: 養子は1人まで法定相続人に含める
  • 実子がいない場合: 養子は2人まで法定相続人に含める

孫を養子にするケースが多く見られますが、孫養子の場合は相続税額が2割加算される点に注意が必要です(代襲相続の場合を除く)。

対策7: 遺言書の作成

遺言書自体は直接的な節税対策ではありませんが、遺産分割を円滑にし、各種特例を確実に適用するために非常に重要です。

  • 小規模宅地等の特例の適用: 誰がどの土地を取得するかを明確にすることで、最も有利な特例適用が可能に
  • 配偶者控除の最適化: 二次相続を見据えた配分を指定
  • 遺産分割の紛争防止: 相続人間で揉めると申告期限に間に合わず、特例が使えなくなるリスクがある

公正証書遺言は、公証人が作成するため法的な有効性が高く、紛失や改ざんのリスクもありません。費用はかかりますが、確実な対策として推奨されます。

対策8: 家族信託

家族信託は、財産の管理・処分を信頼できる家族(受託者)に委託する仕組みです。認知症対策と相続対策を兼ねることができます。

  • 認知症リスクへの対策: 判断能力が低下しても、受託者が財産を管理・処分できる
  • 遺言代用信託: 信託契約で二次相続先まで指定可能(遺言では不可能)
  • 不動産の共有回避: 複数相続人による共有を避け、管理を一元化
  • 段階的な財産承継: 第一受益者→第二受益者と段階的に承継先を指定

ただし、家族信託は設計が複雑で、司法書士や弁護士などの専門家のサポートが必要です。信託財産に対する贈与税・相続税の取り扱いにも注意が必要です。

対策9: 公益法人等への寄付

相続財産を国、地方公共団体、特定の公益法人等に寄付した場合、その寄付した財産は相続税の課税対象から除外されます。

  • 相続税の申告期限(10ヶ月)までに寄付する必要がある
  • 寄付先は国、地方公共団体、特定の公益法人等に限られる
  • 所得税の寄付金控除とは異なる制度

社会貢献と節税を両立できる方法ですが、適用できるケースは限られます。寄付を検討する場合は、事前に税理士に相談しましょう。

対策10: 相続時精算課税制度

60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫に贈与する場合、累計2,500万円まで贈与税を非課税にできる制度です。ただし、相続時にこの贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算するため、贈与税の「先送り」という側面があります。

2024年からの改正ポイント

2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与は相続財産に加算されません。これにより、精算課税を選択しても、年110万円までの少額贈与は完全に非課税で移転できるようになりました。

  • メリット: 値上がりが見込まれる資産(株式、不動産等)を早期に移転し、贈与時の価額で固定できる
  • メリット: 年110万円の非課税枠(2024年以降)で少額ずつ移転可能
  • デメリット: 一度選択すると暦年贈与に戻れない
  • デメリット: 小規模宅地等の特例が使えなくなる場合がある

収益物件や将来の値上がりが確実な資産がある場合に有効ですが、選択は慎重に行うべきです。

まとめ

以上の10の対策をまとめると、以下の通りです。

対策効果の大きさ実行のしやすさ
暦年贈与中〜大簡単
教育資金一括贈与やや煩雑
住宅取得資金贈与簡単
生命保険の活用簡単
不動産の活用専門家必要
養子縁組やや複雑
遺言書の作成間接的やや煩雑
家族信託専門家必要
公益法人等への寄付状況次第やや煩雑
相続時精算課税制度中〜大慎重に判断

相続税対策で最も重要なのは「早く始めること」です。特に暦年贈与は、10年、20年という長い期間をかけるほど効果が大きくなります。また、複数の対策を組み合わせることで、さらに効果を高めることができます。

まずは当サイトの相続税シミュレーターで現状の相続税の目安を把握し、その上で具体的な対策の検討を始めてみてください。実際の実行にあたっては、税理士、弁護士、司法書士などの専門家にご相談されることを強くお勧めします。

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